
AIエージェントの会話記録が約177日分たまった。前の判断や背景を踏まえて動いてくれるのは、使い続ける理由の一つだ。
一方、短いやり取りの裏で、どれだけ情報を読んでいるのかが気になった。確認すると、長い指示、過去の設定経緯、使わない機能の説明まで、その都度渡されていた。
運用を見直した際、コンテキスト量は十数万トークンから約2.4万トークンになった。これは自分の環境で確認した値で、全作業の料金が同じ割合で減った、回答品質が上がったという測定結果ではない。
記録を残すことと、毎回読ませることは別だった
やったのは、記録を消すことではない。長い経緯を別ファイルへ分け、必要な部分を必要なときに読む形へ変えた。不要なプラグインや、担当の役割に合わないスキルも整理した。記憶をAIの側ではなく自分の側に持つ考え方は「AIの記憶は自分で持ち、知能だけを交換する。OpenClawとMCPでベンダーロックインを避ける情報設計」に書いた。
ここで『短ければよい』にすると、別の問題が起きる。大事な制約まで外してしまえば、読む量は減っても、前に決めたことを破るかもしれない。減らしたいのは不要な読み込みであって、判断に必要な根拠ではない。
常に渡す情報、必要時に探す情報、操作前に確かめる情報
今回の経験を整理すると、情報には少なくとも三つの扱い方がある。
公開してはいけないことや承認の範囲など、判断を外してはいけない制約は、普段の入口から分かるようにする。過去にその結論へ至った長い経緯は、参照先を残し、必要になったときに開く。
一方、予定や進捗、外部サービスの状態は、記憶に残っていても今も正しいとは限らない。変更操作の前には、最新の正本や実状態を確認する。予定を一つの正本に残して複数のAIで調整した話は「複数AIの予定を5分で調整できた理由。統括役に渡すのは、予定だけでなく判断基準」に書いた。
すべてを『覚えているか』で考えるのではなく、情報ごとに『いつ、どこから確かめるか』を決める。それが読み方の設計だと思う。
別ファイルに移すだけでは、読み出せなくなる
長い文章を外へ出しても、探す手がかりがなければ、実質的には忘れたのと同じになる。案件名、日付、対象ID、何を判断した記録なのか。必要な節へ届く索引が要る。
ただし、索引だけ読んで仕事を進めるのも違う。結論を左右する条件や根拠は、本文まで確かめる。記憶の要約は入口であって、原文の代わりではない。
検索で見つからないときも、『記録がない』と即断せず、探せなかった範囲を区別したい。過去の決定を推測で補うより、未確認だと分かる方が次の判断を誤りにくい。
読む量だけでなく、必要な答えが戻るかを見る
同じ見直しをするなら、削減前に確かめられていた質問を残しておくとよい。前の決定、禁止事項、未完了の仕事、対象の保存先など、実務で必要な問いだ。
見直した後に、それらを根拠付きで取り出せるか。古い予定を現行扱いしないか。必要な情報まで落としていないか。確認できなければ、常設の要約や索引を補う。トークンが減っただけでは合格にしない。
Anthropicの公式記事でも、必要な情報を状況に応じて取り込むコンテキスト設計が論じられている。ここで述べた三分類と確認方法は、そのままの引用ではなく、自分の運用経験から整理した考え方だ。
記憶が増えること自体は悪くない。必要なときに根拠へ戻れないことが問題になる。何を残すかに加え、何をいつ読むかを育てる。それが、AIを長く使うための整備だと感じている。