
複数のAIエージェントの予定がぶつかったとき、統括役を置いたら、約5分で調整が終わったことがある。自分が両方の事情を聞き直して、日付を組み直す必要がなくなった。
ただ、『統括AIを一つ置けば、何でも解決する』と受け取ると大事な点が抜ける。統括役に必要なのは、予定の一覧だけではない。何を優先し、どこまで動かしてよいかという判断基準だ。
担当ごとの正しさが、全体の衝突になる
専門のエージェントは、自分の担当をよくしようとする。ある担当は、関連するものを続けて出したい。別の担当は、その日までに必要な準備が終わらない。どちらも担当としては理由がある。
ここで双方に『うまく相談して』と任せるだけでは、誰が最終判断をするかが残る。日付を動かせば、その先の仕事や参照先にも影響する。目の前の二件だけ解決しても、全体が整ったとは限らない。
そこで自分の運用では、各担当はメインに予定を伝え、担当同士で直接日程調整をさせない形にした。メインが両方の事情を見て決める。複数のAIの進み具合を見失わないための運用は「複数AIの「今どこまで進んだか」を見失わない。herdrで始めたエージェント運用」に書いた。
統括役には、変更してよい範囲が要る
この経験を別の仕事へ広げるなら、まず『動かせない条件』と『調整できる条件』を分けたい。公開済みの約束や確定納期と、担当が希望している順番を同じ扱いにはできない。
先に終わっていなければならない作業、変更に承認が必要なもの、統括役だけで入れ替えてよいもの。それぞれを明示する。根拠がないときは、人に確認すべきだ。
統括役を置くことは、AIへ無制限に決定権を渡すことではない。人が決めた範囲の中で、調整の往復を引き受けてもらうことだと思っている。
決まった予定を、各担当の会話だけに残さない
もう一つ、運用上そろえたいのは、確定した予定をどこに記録するかだ。担当Aの会話には新日程、担当Bの会話には旧日程が残っていたら、また衝突する。
一つの正本を決め、変更理由と影響する仕事を残す。各担当へは、相談の全履歴ではなく、何が確定し、何を変える必要があるかを渡す。これを再利用できる運用の条件として考えている。AIに渡す情報を自分の側で持つ考え方は「AIの記憶は自分で持ち、知能だけを交換する。OpenClawとMCPでベンダーロックインを避ける情報設計」でも書いている。
完了報告も同じだ。『依頼を受けた』と『予定を書き換えて読み戻した』は違う。統括役が受付を完了と誤認すれば、表面上は整った予定でも、実際の作業は旧予定のままになる。
単発の仕事なら、統括役を増やさない
質問に答えてもらうだけなら、統括役を挟む必要はない。担当を増やすほど、説明と受け渡しも増える。一人で完結する仕事をわざわざ分けると、調整のための調整になりかねない。
統括役が役に立つのは、複数の担当が同じ日程や成果物に関わり、個別の最適化が全体へ影響する場面だ。人数ではなく、依存関係があるかで考えたい。
今回の5分は、一度の調整にかかった時間であり、常に同じ時間で済むという保証ではない。それでも、毎回自分が前提を思い出す負担が減ったことには意味があった。
製造や営業でも、担当の努力だけでは解けない衝突はある。必要なのは、さらに担当を増やすことより、判断基準と決める人をそろえることかもしれない。AIの統括役も、その順番で設計したい。