大手企業との取引では、自社の専門分野だけでは答えられない相談を受けることがある。
先日、お客様から、ある鋳造方法について意見を求められた。弊社の本業は機械加工であり、鋳造会社とのつながりはあるが、その工法の専門家ではない。
分からないまま曖昧に答えることも、AIの回答を専門家の見解として返すこともできない。そこで、まずAIを使って論点を整理し、誰へ何を確認すべきかを明確にした。
最初に調べたのは、答えではなく確認項目
電話の後、TeslaのGrokへハンズフリーで相談した。
- なぜ、その鋳造方法が使われるのか
- どのようなメリットと制約があるのか
- どのような部品で採用されるのか
- 加工後に必要となる検査は何か
調べる中で、単に鋳造会社を探すだけでは足りない可能性が見えてきた。重要部品であれば、非破壊検査や浸透探傷検査なども含め、品質を確認できる体制が必要になる。
そこでお客様へ、「鋳造単体ではなく、検査工程まで一貫して確認できる会社を選んだ方がよいのではないか」と、一歩踏み込んだ返答ができた。
AIは専門家の代わりではない
ここで注意すべきなのは、AIの回答だけで技術判断を確定しないことだ。材料、用途、要求品質、図面、公差、検査基準によって、必要な工程は変わる。最終的には、鋳造や検査の専門家へ条件を示して確認する必要がある。
AIへ任せたのは、結論を出すことではない。
未知の分野で何が論点になるのかを短時間で洗い出し、専門家へ確認する質問を作ることだ。この使い方なら、知識がない状態から、正しい相談先へ進むまでの時間を短縮できる。
町工場に求められるのは、周辺工程を見る力
大手企業との仕事では、自社の加工だけを見ていればよいとは限らない。前工程の素材や鋳造、後工程の熱処理、表面処理、検査、輸送まで含めて、案件全体を見渡す力が求められる。
すべてを自社で行う必要はない。しかし、どこにリスクがあり、どの専門家へつなぐべきかを考えられれば、顧客へ返せる提案の質は上がる。
AIは、町工場を一夜で専門家に変える道具ではない。専門外の相談に対して、確認すべき論点と次の相談先を見つける「目利きの入口」を作る道具だ。専門家と人間の判断を前提に使えば、少人数の会社でも提案の幅を広げられる。
